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アメリカの大学に就職するプロセス

うちの大学のカウンセリングプログラムで現在2枠教授職が空いています。一つは私と同じAssistant Teaching Professor (Non-Tenure track)のポジション。もう一つは34年働いたベテラン教授がこの度リタイアするので、そのTenure Track Assistant Professorのポジション枠です。うちのプログラムは現在ベテラン教授と私を含めて8人教授がいます。その中でNon-Tenure trackのポジションは私ともう一人を含めて二人。そしてそれ以外はTenure trackまたはTenured/Full professorです。色々あるとごちゃごちゃするので種類をこの記事 [よく聞かれる質問「教授の種類」]にまとめておきました。お時間とご興味ある方はどうぞ〜。

私は緊急事態で超スピード雇用されたので、面接と書類などだけでしたが、今回は私のHiring committe(採用委員)としての経験をシェアしたいと思います。ちょっと日本語でググってみると教授になる方法=PhD取って、研究して、Tenuredという流れしか書いていないブログが多いので、実際に大学教授の枠に応募するとどうなるのかについて説明いたします。でも大学と分野によって流れが微妙に異なることも多々ありますので、参考程度にしておいてくださいね。

ではAssistant Teaching Professor(Non-Tenure track)のポジションのHiring committee(採用委員)の経験について・・
私のプログラムのAssistant Teaching Professor(Non-Tenure track)では研究は求められず、実質のところTeachingとServiceだけです。私は普通にTenure track(終身雇用を目指す教授職)に近い量の研究をしていますが、研究が一年に一度ある審査では評価されません😭 私はなので春と秋の二学期4クラス教え+大学のサービス業(委員会とか、Honor societyの顧問や、諸々。詳しくはこちらで[教授って何してるの?] )を担当して、夏は教えたかったらボーナスが出るので授業を教えるルーティーンです。今回私は同じポジションのAssistant Teaching ProfessorのHiring committe(採用委員)となったので、どういう流れで採用までいくのかをざっくりと説明いたします。

オンラインに告知
大学のprovost(めっちゃお偉いさん委員会)から承認されたポジションはオンラインで告知されます。アメリカのカウンセリングでよく職の告知がされるのはCESNETというメーリングリスト、そしてHigherEdJobs。中にはグループに特化した(人種とか)掲示版もあるらしいのですが、私はこの二つが一番使われているかなと個人的に思っています。まぁあとはオンライン求人広告ですね(Indeedとか)。

書類選考
オンライン告知がされると最初は書類選考に入ります。一応期限は決めておきますが、誰かいい人が見つかるまで募集かけている場合がほとんどです。そして、そのことは告知にも書いてあります。Open until filledというやつですね。こういうポジションは数ヶ月後にまた告知が出てくる場合もあります。その場合は、「あー良い人がいなかったんだなー(それかいたけど断られてしまった場合も)」と思っておいてください。書類はCV、Teaching Philsophy、Diversity statement、Transcriptを出してもらいます。CVは履歴書の長い版。Resumeは自分の経験の要約版なのに対して、CVは全部書きますのでめっちゃ長くなります。私のCVでさえ7ページくらいですかね。いつかCVの書き方もブログに書こうかな。内容はここでは書きませんが、とりあえず自分がこの仕事に合うためにやったこと全部書きます。Teaching Philosophy (Tenure Trackの場合はResearch philosophyが要求されますので悪しからず)は自分の教え方哲学を書くものです。私も今のポジションにアプライするときに書きました。どの教授理論を使うか、学生をどう捉えているか。自分の経験に基づいて書きます。Diversity statementは多文化カウンセリングや多文化教育に対してどう思っているか、そしてどう自分のアイデンティ(人種、性差、性的志向、国籍、障害あるなし、などなど)が自分にどう影響して、それが学生や自分の仕事にどう影響するか、というようなことを書きます。Transcriptは大学院の成績表ですね。Recommendation letterは?と思う方もいるかと思いますが、今回はファイナリストだけに限って提出してもらいました。なので書類選考はこれだけです。

Zoom面接
Zoomが普及していた時はどうしていたのかはわからないのですが、書類選考で通った人はZoom面接に来てもらいます。一人持ち時間30分でスピード面接。こちらが面接で聞いたのは大体授業の経験値がわかるものでした。Teaching positionですからね。教えられなければ話にならないので・・・。教えるにしても大学ではなく、大学院レベルでカウンセリングを教えたかどうかが重要でした。とりあえずアメリカは即戦力を大切にしているので、入ってすぐ仕事ができる人が欲しいというのはどこの仕事でもそうだと思います。入ってからトレーニングとかは、少しは・・・ありますが、やっぱり即戦力が求められます。それがうまくアピールできて、こちらもぜひ会ってみたいと思えた3人がファイナリストとしてセントルイスに呼ばれました。

対面面接の準備
ファイナリストが州内に住んでいるなら別ですが、大体の場合州外から来ていただき、二日間かけて面接をします💦これが大変でした。まず全員にホテルを大学が予約(飛行機代はファイナリスト持ち)。3人ファイナリストが別々に来るので、ファイナリストのスケジュールと合わせて同じホテルを大学側が予約しました。飛行機ではなく車で来る人もいますが、セントルイス内での移動は基本的に私たち側が行います。なので一人一人マスタースケジュールなるものを委員長が作ってくれて、どのファイナリストが何時にどこで誰が面倒を見ているか一目でわかるようにしました。採用委員として私も車を出してピックアップやドロップしたりしましたよ。

対面面接の内容
ファイナリスト一人に対してかなり時間とお金(ホテル代、食事代などなど)を使うので、かなり考えて誰を呼ぶか決めます。対面面接の内容はこちら、Deanとの面接、教育学部の他プログラムとの面接、現カウセリング学部の学生(修士+博士課程)との面接、カウセリングプログラムの教授との面接、ティーチングデモストレーション、セントルイスツアー、キャンパスツアー、カウンセリング室ツアー、カウンセリングプログラムの教授との昼食と夕食などなど・・・めっちゃありますよね。

全部審査対象ですが、この中で特に私が注意して審査したのはカウセリングプログラムの教授との面接とティーチングデモストレーションでした。カウセリングプログラムの教授との面接は今の教授7人(リタイアする先生は出席しません)が面接紙を見ながら質問します。現カウセリング学部の学生(修士+博士課程)との面接とティーチングデモストレーションは出席した学生も感想を教えてくれます。ティーチングデモストレーションは既存のクラスの最初45分を使ってファイナリストが選んだテーマを教えてもらいます。テーマはやはりカウンセリングに特化したものがいいですね。私の多文化カウンセリングのクラスでも一人ファイナリストに来てもらいました。

州外からのファイナリストには現地のことも知っておいてもらわないといけません。こちらからオファーをしてもあっちが断る場合もあるので、こちらもセントルイスの良いところを知ってもらおうとツアーなどを組み込みます。セントルイスツアーではセントルイスの観光名所+候補として住みやすい場所などを巡ります。大体ファイナリスト一人にこちらから採用委員が一人。私もファイナリストを一人セントルイスツアーとキャンパスツアー(これは二人に)に連れて行きました。セントルイスは住みやすいよー、でも社会問題はこういうことがありますよー(カウセリングなのでこういう話も普通にします)。大学構内のツアーも忘れずにします。イメージしてもらえるように色々こちらも質問に答えたり、相手を知るために質問したり・・・ツアーは結構大変です。楽しいんですけどね。

そしてみんなが一番好きな夕食会や昼食会。これは複数の出れる教授だけが出席するもので、あまり多いとファイナリストが緊張してしまうので気をつけます。でも私はファイナリストの夕食か昼食どちらかは必ず出席できるようにしました。授業が夜あるので夕食がダメな場合は翌日の昼食に行くなど・・・。リラックスしたところで話す内容も大切ですし、こちらのチームの仲良しさをアピールするのにも大切な機会です。これは大学が全部払ってくれるので、セントルイスで有名なお店やファイナリストのリクエストなどを聞いて決めます。

そして全て終わったら(飛行機で来ている場合は)飛行場へ連れて行って、一人終わりです。これを一枠三回繰り返します。そして全員終わったら、プログラムの教授陣で集まり最終的に誰にオファーするか決めます。

ようやく今は終わりましたが、この二ヶ月くらいあんまり精神的余裕がない状態が続いていました。いつもは家で仕事している時に大学へ行ったりツアーに駆り出されたりしているので、研究をする時間がない!と焦っております。アメリカの大学教授になるのは本当に大変ですが、面接する方も大変です💦これから教授職を考えている方参考になればと思います。

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Theme: 人事・雇用制度 | Genre: 就職・お仕事

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