in 博士号への道

アメリカで留学生がカウンセリングの大学院に行くということ

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今日はファーガソンについて書こうと思っていたのですが、授業で思う所があったので急遽テーマを変更します。
Practicum Iの授業では毎週カウンセリングセッションのビデオをクラスで映しグループスーパービジョンをしてもらいます(授業の内容はこちらで)。今日のクラスメートのクライアントさんはある国からの留学生でした(confidentialityのため内容は伏せます)。いまカウンセリングの修士で頑張っている学生なのですが、そのセッションのビデオを観て、自分の昔を思い出してしまいました。

なのでテーマはこちら、

アメリカでカウンセラーという高い語彙力そして洞察力を必要とされる職業に留学生(Non-American origin)がチャレンジするということはどういうことなのか。

三言で言って、めっちゃ辛い。めっちゃ苦しい。そしてめっちゃ嫌になる。の三重苦。

カウンセリング学部で留学生の数はとても少ないのですが(1セメに一人いるかいないか。私が入学した時は私一人でした。)留学生でうちの大学院に来る子達には一つ共通するものがあります。それは、世界を変えたい。その気持ちは時としてアメリカ人の学生よりも強いものがあります。一人一人訳があってアメリカに来ています。それも低収入のカウンセリングに。それはおそらく国境を超えて海を越えて来たからこその決意があるからでしょう。このクライアントの子も政府から助成金をなんとかして取ってアメリカにやって来たそうです。でもその決意をたまに打ち砕いてしまう程、実際は結構辛い現実があります。

1)言葉の壁。留学生に共通する問題です。でもカウンセリングを目指している学生には致命的なものがあります。カウンセラーはクライアントさんと主に言葉でサポートします。話を聞いて、辛い人生を少しでも明るいものにする為のお手伝いをするのです。私はPerson Centerという理論を主に使ってカウンセリングをしますが、クライアントとのカウンセリングの1時間余り全身を耳にしてお話を聞きます。その間に頭で考える、心で感じるのです、このクライアントさんが何を求めているのかを。たまにクライアントさんは気がついていない心にいち早く気がつきクライアントさんに伝えるのもカウンセラーの仕事です。その為には本当に大変な集中力、記憶力(セッション中ノートは取れないのですべて記憶して行きます。一つ一つのイベントがいつ役に立つのか分かりませんから、どんな話や仕草も重要な情報です)、そしてなによりも語彙力が不可欠にになります。でもこの大切な部分が英語圏出身でない限り留学生カウンセラーには本当に大変になります。常に恐れているのはクライアントさんの話をきちんと理解できているだろうか、クライアントさんに言葉の壁のせいで軽くみられていないだろうか。色々な不安がいつも渦巻いています。クラス内でも同じです。ディスカッションについて行けない。皆が笑っているのに、一人だけ何がおかしいのか分からない。疎外感、孤独、などを感じる毎日です。

2)Self-esteem(自尊心)の低下。カウンセラーを目指す人は結構話したがり屋が多いのです。聞くのが仕事のなのですが、意外におしゃべりなんです。なので、私たちの博士過程のクラスでは話が途切れることがありません。いろーんな話をします。カウンセリングの理論の話から、教授のうわさ話、クラスの話、個人的な悩み事、見た映画の話。本当におしゃべりなので、たまに教授が気の毒になります。それに負けじと話すのがうちの教授ですが。英語をある程度マスターすれば、なんてことはないのですが、私も修士の時は本当に疎外感、孤独を毎日感じていました。クラスの皆が楽しそうで、私も加わりたいのに英語では無理っぽい。母国語でなら分かることが、英語だと分からない。だんだん自分らしさも失って行ってしまう留学生もいます。「自分の国だったら私はとっても明るくて元気なのに、ここでは誰も私をそう言う目でみてくれない。」留学生、移民によく聞く台詞です。クラスの授業だってそうです。辞書を毎日引いてアメリカの学生よりも2−3倍の時間をかけて宿題やって、教科書読んで、勉強して、でもまだついて行けていない。特にがんばり屋さんのタイプの留学生には本当にキツいプロセスです。こんなことでいっちょまえのカウンセラーになんてなれない、私はカウンセラーに向いてないんだって泣いたことも数えきれないほどあります。

3)文化の壁。これが私には一番恐かったかもしれません。クライアントさんとの文化の壁。クライアントとカウンセラーが良いカウンセリングセッションを持つ為には、強い信頼関係が必要です。その為には、「聴かれた(傾聴された)」と「裁かれない」という安心感が必要になります。しかし、その安心感の為に文化を理解する必要があるんです。アメリカはモザイク社会です。色々な文化の集合体です。ある意味ここで育ったから分かる文化もあるのだと私は思っています。それを国外から来た留学生がカウンセリングをするとなると、まず文化が分からないかもしれないという壁があるのです。私の失敗談になりますが、何年も前に一度クラスメートをカウンセリングするという実習がありました。私のクライアント役の人はAfrican Americanの男性だったのですが、彼が家族の中でプレッシャーを感じるというような問題を提示してきました。その時に私は彼の文化背景をよく考察せずに、「家族の誰かに相談してみてはどうか」と提案してしまいました。African Americanの文化では男性は強くあるべきという考えがあります。それを私は「相談する」=「家族に弱さを見せる」というアプローチを提示してしまったという大失敗談です。その時一緒だったクラスメート一人(同じくAfrican American)が授業が終わってから一言「最悪なセッションだったわ」と吐き捨てて言ったのが今でも記憶に残っています。そのあとそのクライアント役の人、そして別のクラスメートが半泣きの私を励ましてくれたのですが、こういう文化が分からないということが本当に命取りになるのです。それ以来、それまで以上に文化の勉強をするようになりました。今ではクライアントさんの人種、宗教、出身地からこういう文化を持つ場合があると一応頭の中でシミュレーションできるようにもなりました。でも未だにあの失敗を考えると気が滅入ります。

私はMulticultural counselor (多文化カウンセラー)を自称しています。そして私は一つ一つの文化に価値を見いだし、出来るだけクライアントさんの目から世界をみようと心がけています。アメリカ人でなく、留学生で多文化カウンセラーという仕事の選択自体かなりのチャレンジだといまでも思います。幾ら多文化国家のアメリカだとはいえ、みんながみんな多文化に興味があるわけではありません。むしろ興味があるのは少数派なのではないでしょうか。ある意味私たちが感じる生き辛さ、不安や恐怖もそのアメリカの風土にあるのだと思います。違いに寛容的なようで寛容でないアメリカ人。そのギャップに大学院にやってきた留学生カウンセラーの学生は戸惑いを感じます。おそらくアメリカには限りませんが、移民の私たちには社会から声のないメッセージがいつも聞こえてくるのです「受け入れて欲しい?じゃあ俺たちの言葉を話せよ。じゃあ俺たちらしく考えて、俺たちらしく行動しろよ。そうじゃないと無視されても仕方ないだろ。」おそらく声の掛け方が分からない、どうやって会話をスタートすればいいのか分からないという相手の良い分もあるでしょう。でも私たちは認められたいのです。私たちの存在を受け入れて欲しいと強く願っています。だってカウンセリング大国のアメリカに来た理由は、あなたたちから学ぶ為なのだから!

本当の多文化国家とは違いを受け入れて、尊敬し合って、一人一人が安心できる国だと思うのです。以前America is beautifulという有名な曲が様々な言語で歌われたコカコーラのCMがありました。それに寄せられたのはビックリする程のネガティブなコメントでした。アメリカなら英語を喋ろよというコメントもありました。移民国家アメリカ。外国人労働者を受け入れ政策を推し進めている日本。Foreign laborを制限する対策を立ててEUから追放させられそうになっているイギリス。世界が本当に求めているのは国を超えて安心できる、愛を持った文化なのではないでしょうか。

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セントルイスカウンセリング博士号学校アメリカ

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2 Comments

Duke  

頑張っておられますね。

困難も多い目標にチャレンジされているようで敬意を表します。今のご経験が カウンセラーとしての懐の深さにつながることでしょう。目指されているの臨床心理士のようなお仕事でしょうか。私もこちらに来てから、結構depressedな毎日でして、メンタルヘルスの大切さを実感しています。

2014/11/15 (Sat) 17:09 | EDIT | REPLY |   

Yuima  

Duke様

返事が遅れまして申し訳ありません。
身の丈知らずで高い目標にチャレンジしてしまい、毎日必死でみんなについて行っています。
臨床心理士と似ているのですが、アメリカでは定義がちょっと違います。日本の臨床心理士の仕事はこちらで言うと、アメリカの心理学者とカウンセラーの複合職のような感じです。そういう意味ではアメリカのほうが職の違いがハッキリしていて、クライアントさんが安心できて私達も自分の職に専念できるというメリットがあります。私は日本の心理学がアメリカの50-100年遅れていると知ってこちらに来たので、あまり日本の臨床心理士に詳しくはないのですが、上記のような違いがやはりあるようです。

2014/11/20 (Thu) 08:21 | EDIT | REPLY |   

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